ビジネスでの服装戦略
とりわけビジネスにおいて、第一印象はとても大事です。ある学校の就職支援センターが100人以上の人事担当者を調査したところ、第一面接で落とす理由で一番の理由は、さえない外見だったそうです。
ビジネスシーンで大事な『4A』
■Apropriate(適切であること)
ビジネスで何を着るべきかとう問いに対する答えは単純明快、『それは時と場合による』のです。
近頃では、これが正しいといった絶対的な基準はありません。
その代わりに、業種や職種、地域、そして具体的にビジネスのどんな場面であるのかによって、また、イメージを通してどんなメッセージを伝えたいのかによって、何を選択するかは違ってくるのです。
一般的に、金融業界には保守的なドレスコードが他の業界よりもしっかりと残っています。
金銭が絡むと、顧客やクライアントは伝統的で安定したものを見たがるものです。
広告業界や、創造性や斬新な考えを示さなければいけないビジネスでは、よりファッション志向のスタイルが好まれます。
■Attractive(魅力的であること)
魅力的な服を選ぶということは、その人に合う色をみにまとい、スタイルをよく店、要望を際立てるということです。
魅力的であることは仕事にあまり関係のない『些細なこと』、と勘違いしている人もいます。
けれでも本当のところは、魅力でもってものを売っているのです。
ただし、その魅力を備えるためにほとんど苦労しないこともあれば、多くの時間と注意を要することもあります。
■Affordable(余裕があること)
たとえ世界最高のワードローブ計画であっても、予算を大幅に超えてしまうのなら、あまり価値はありません。
たいていの人が、ランボルギーニやポルシェ、フェラーリを運転してみたいものです。
でも、何を犠牲にして?家具のない暮らし?安全ではない場所に住むしかない?学費も払えず、休暇もプレゼントもなし?もし服への出費が家計を圧迫していて、どこでどんなふうに暮らしたいという望みが叶わないとしたら、それはバランスを欠いているということです。
しかし、覚えておいてください。
持ち運びのできるもっとも重要な財産、それがイメージなのです。
ほとんどの人は他人の家や車、バイク、また株券ポートフォリオを見ることなく、他人が休暇をどこで過ごすかなど知りません。
けれども、他人がどんな品質の服を着ているか、あるいは、どんなふうに自分の見た目に気をつかっているかについては必ずみているのです。
幸いにも、解決のカギはお金よりもセンスにあります。
並みの予算でも、たっぷりの予算をかけた外見に見劣りすることはありません。
秘訣は、限られていようと有り余っていようと、手持ちのものをうまく活用することです。
■Assured(自信があること)
どんなにエレガントな服であっても、それだけではやはり手のイメージをつくることはできません。
人は紙の着せ替え人形ではないのですから、紙の服をかぶせただけでは新しい個性を帯びることにはならないのです。
見た目と行動が一致していないと、自信をもったプロとしてのイメージは完全なものになりません。
イメージが定着するまでには時間がかかり、またイメージを強化していく必要もあります。
クライアントに接する人が、自分の外見をガラッとかえると、はじめのうち、それらが自分にしっくりこないように感じることはよくあります。
身なりがよくなると自分でもたいてい唖然としてしまうのもですが、新しいヘアスタイル、服装、小物類、そして女性なら化粧が、本物になったと感じられるようになるまでには時間がかかるのです。
声のトーンや身振りなどのノンバーバル・コミュニケーションと、劇的にあたらしくなったイメージとの間の違和感がなくなるまでには、時間が必要なのです。
見た目の強烈なイメージどおりの人物なのかどうかは、自信たっぷりの態度、はっきりとしたアイコンタクト、力強い握手、それからとっさの微笑みといった振る舞いによってわかるものです。
姿勢や頭の動き、表情、身振りなどの非言語的なサイン、話された言葉が明確になるのです。
(参考文献 古沢めぐみのコラム アサヒ新聞社)
アメリカ大統領の服装戦略
歴代アメリカ大統領に、専属のイメージコンサルティングチームがついているのは有名な話です。
クリントン前大統領はアーカンソー州知事時代、服装や言葉遣いなどが洗練されていることはいえなかったのですが、その親しみやすいイメージで成功し、地元の支持を集めていました。
しかし、アメリカ大統領になると、周囲の助言にしたがってイメージコンサルタントを雇い、洗練されたイメージをまとってメディアに登場、大統領としての支持率をさらに上げました。
一方、レーガン元大統領は俳優出身だけあってスタイルもよく、普段からとてもダンディーなスーツの着こなしをしていました。
しかし、近寄りがたい印象を払しょくし、労働者階級まで広い支持を得るために、あえて茶色系の服装を多用し、親しみやすさをアピールしたのです。
ブッシュ大統領の服装に関しては、アメリカ国内では、『面白みがない』とあまり評判がよくありません。
しかし、9.11同時多発テロの当日の装いは見事でした。
遊説先の学校で事件後第一声の会見をした時は、若さや力強さをアピールする赤いネクタイのままでしたが、移動後改めて声明を発表した際には、冷静さや誠実さを表すブルーのネクタイに替えて登場しました。
常にメディアを通して世界中から注目される大統領は、あのような混乱にあっても、冷静にイメージ管理をしているという証しです。
イメージの重要性がアメリカで認知されたのは、少し古い話ですが、1960年のケネディVSニクソン大統領選挙にまでさかのぼります。
アメリカ史上、初めて立ち合い演説会がテレビで放映されるあたり、ケネディはビジュアルの重要性を認識し、プロのイメージコンサルタントを雇って服装、話し方、ボディーランゲージなどを研究して臨み、視聴者の支持をえました。
演説の模様をラジオで聞いた人は、ニクソンを支持した人が多かったそうですが、結果はご存じのとおり、若くてさわやかなイメージ戦略により、ケネディが勝利を収めました。
ちなみに、この出来事をきっかけにアメリカではイメージコンサルタントという職業も一般に知られるようになったといいます。
ブッシュVSゴアの時も面白い出来事がありました。
テレビでの最終討論会で二人の候補者がほとんど同じ服装をしてきたのです。
二人には別々のコンサルたんとがついていたのでしょうが、考えることは同じだったようです。
ほぼ、同色のダークスーツに赤いネクタイ、レギュラーカラーのシャツ。
赤のネクタイは一昔前は『パワーネクタイ』と呼ばれていました。そして、紺、赤、白は星条旗を表現し、アメリカの国民の愛国心にうったえるという作用があります。
インターネットの普及で画像や映像の配信はますます手軽になり迅速化しています。
ビジュアル化が進み、好むと好まざるにかかわらず外見を意識しないではいられない世の中が来ていることを、わが国の政財界の代表たちにも、もう少し理解してほしいものです。
(参考文献 古沢めぐみのコラム アサヒ新聞社)